こんにちは!つばさぬです。近頃当ブログを見てくださる方が増えてきていて、とても励みになっています。改めてありがとうございます🙇♂️
タイトルのとおり今回は東京ディズニーシー のテーマポートのうちの1つ、メディテレーニアンハーバー を「ルネサンス 」という視点で見てみようという記事です。以下の記事をお読みいただければより理解が深まると思うので、お時間ある方はぜひ...!
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このたび新しい試みとして目次を付けてみたので、特定の項目のみを参照したいという場合にはぜひクリックしてご活用してみてください!
目次
また当ブログの全ての記事におけることですが、この記事の内容はすべて僕個人の解釈によるものであり、決して確定的な情報を伝えるものではないことを予め断っておきます。
まずメディテレーニアンハーバー について軽くおさらいです。このテーマポートは東京ディズニーシー の玄関口にあたり、20世紀初頭の南ヨーロッパ (イタリア、スペインなど)がモチーフとなっています。
メディテレーニアンハーバー はさらに3つのエリアに分けることができます。以下にそれを紹介します。
ポルト ・パラディーゾ
イタリア語で「パラダイスの港」を意味し、実在するイタリアのリゾート地ポルトフィーノ やフィレンツェ などのトスカーナ 地方の港町が舞台になっているエリアです。カラフルで活気ある街並みが特徴的。
パラッツォ・カナル
「宮殿の運河」の名を持つ、ヴェネツィア を舞台としたエリア。『カナーレ・デッラモーレ』(日本語で「愛の運河」の意)という運河を中心として、石造りの優雅な建築が所狭しとひしめき合っています。夕暮れ〜日没後に行けばノスタルジックな気分を味わえて個人的におすすめの場所です。
大航海時代 のイベリア半島 にそびえる要塞(フォートレス)をモチーフとしたエリア。要塞を歩き回って探検するアトラク ション『フォートレス・エクスプロレーション』の舞台でもあります。僕がパークで一番好きな場所です。要塞の中には様々な部屋があり、各部屋で偉人たちの様々な偉業を見たり体験することができます。レオナルド・ダ・ヴィンチ やコロンブス といった著名なメンバーで構成された組織『S.E.A.』が活動の拠点としているという場所でもあります。
今回の主題になるルネサンス ですが、一度は耳にしたことはあるものの、どういったものなのかわからない方もいるのではないでしょうか。ルネサンス とは一言で表すなら「文芸復興」 のことで、一般に14世紀からイタリアで始まった運動のことをいいます。その意義として、古代ギリシア やローマの叡智をヨーロッパにおいて復活させ、発展させていくことがありました。
なぜ古代の叡智の「復活」なのかというと、古代の終焉(一般に476年の西ローマ帝国 滅亡のときとされています)とともにそれらの叡智はヨーロッパでは埋もれてしまうことになるからです。その古代の遺産の担い手として東方のイスラーム やビザンツ帝国 が登場し、それらを継承し発展させていくことになります。中世以降それらの叡智がヨーロッパに逆輸入されたことで、晴れてルネサンス という運動がおこったというわけです。
またルネサンス には、キリスト教 以前の古代の文化を復活させることで、神中心だったキリスト教 による中世観を打破し、人間の価値を再発見しようという側面もあったと言われています。
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それではなぜメディテレーニアンハーバー でルネサンス を学ぶことが出来るのか、両者にどのような関わりがあるのか、について説明していきます。
①地域の一致
先ほども説明しましたが14世紀からのルネサンス はイタリアで始まり、これをイタリアン・ルネサンス といいます。メディテレーニアンハーバー のエリアであるポルト ・パラディーゾとパラッツォ・カナルはちょうどイタリアの都市が舞台になっていますね。
②年代の一致
イタリアから始まったルネサンス は14世紀から16世紀 までのことだと言われています。こちらもメディテレーニアンハーバー のエリアの一つ、エクスプローラ ーズ・ランディングを拠点に活動する組織S.E.A.の設立年代は1538年、その要塞自体も16世紀のもの だと言われています。年代的な視点からもメディテレーニアンハーバー とルネサンス は共通する部分があるんですね。
ちなみにメディテレーニアンハーバー 全体の年代設定としては20世紀初頭とされていますのでご留意ください。(ややこしくてすみません...)
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③テーマソングの歌詞
東京ディズニーシー の各テーマポートにはポート・テーマソングなるものが存在しており、『ポルト ・パラディーゾ(ポート・テーマソング)』がメディテレーニアンハーバー のそれにあたります。この曲の歌詞にこんなワンフレーズがあります。
A renaissance of beauty will enchant you
直訳すると「美のルネサンス が君たちを魅了するよ」的なことを言っているのですが、はっきりと公式の曲でルネサンス と言っているんですね。公式もそういっているのだからメディテレーニアンハーバー とルネサンス につながりがあるのは間違いなさそうです。
music.apple.com
極めつけはこちら。もはや隠す気もなく堂々とルネサンス の名を冠したものがメディテレーニアンハーバー にはあります。それがエクスプローラ ーズ・ランディングにあるガリ オン船『ルネサンス 号』 。名前もそのままなのでこれ以上いうこともありません。
というわけで、以上の理由からメディテレーニアンハーバー とルネサンス には強い結びつきがあることがわかります。それでは具体的にメディテレーニアンハーバー でどのようにルネサンス を学ぶことが出来るのかを見ていきましょう!
まずはパークの中でももっとも皆さんが目にする建築から見ていきます。当然ルネサンス 期の建築を扱っていくのですが、その前にルネサンス 建築が再現しようとした西洋の古典建築の特徴を知る必要があります。ルネサンス 建築では中世では神のためのものだった建築を人間視点に戻すことが図られました。そのためにキリスト教 が布教する以前の古代の建築を模倣しようとしたというわけです。
西洋の古典建築
メディテレーニアンハーバー では、アトラク ション『ソアリン:ファンタスティック・フライト』(以下『ソアリン』)の前に古代ギリシャ 、もしくは古代ローマ のものと思われる建築物があります。
『ソアリン』の前にある古代建築
西洋の古典建築、すなわち古代ギリシャ やそれに続く古代ローマ の建築には柱 とエンタブラチュア と呼ばれる梁からなるオーダー という様式の原則があるとされています。それを示したのが以下の画像です。
またオーダーは柱の装飾によって一般に5つの種類に分かれるとされています。『ソアリン』の前にあるものの柱頭はアカンサス と呼ばれる葉があしらわれているコリント式 のように見えますね。詳しくはリンク先を参照してみてください。
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また、古代ローマ ではアーチ が建築の特徴として見られます。これは石が圧縮に強い性質を持つことを利用したものだと言われています。メディテレーニアンハーバー にはアクアダ クト・ブリッジと呼ばれる橋が架かっていますが、こちらは実際に古代ローマ で使われていた水道橋 がモデルになっていると思われ、いくつものアーチがみられるのが特徴です。
アクアダ クト・ブリッジ
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ソアリン:ファンタスティック・フライト
さて、それではいよいよルネサンス 建築について見ていきましょう。まずは先ほども登場した『ソアリン』の建築です。ちなみにこの建築は『ソアリン』のアトラク ションの建物でありながら、『ファンタスティック・フライト・ミュージアム 』という博物館を模したものになっています。
ソアリン:ファンタスティック・フライト
この建築の外壁にも柱とエンタブラチュアがあり、西洋古典建築のオーダーの原則を踏襲していることがわかります。ただしこの場合の柱は実際には柱の役割を担っていません。こういった装飾のための柱を付柱 、もしくはピラスター と呼びます。
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ちなみにこちらの付柱は柱頭に渦巻きが特徴的な装飾が施されていることからイオニア 式を模したもののように見えます。よく見てみると鳥の意匠があってなんともかわいらしいです。
付柱の柱頭 イオニア 式?
『ソアリン』の建築では青いドーム が特徴的です。このように立体的なドーム構造がエンタブラチュアの上に置かれているのはルネサンス 建築の特徴とされています。ルネサンス 期に建築家ブラマンテが建築を担当したことで知られるローマのサン・ピエトロ大聖堂 にも青いドームがあしらわれていますね。
『ソアリン』のドーム
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建築の壁や窓の周りにある装飾は「小さな祠」という意味のエディキュラ と呼ばれる建築形態で、その上部には三角形や弓形にペディメント と呼ばれる意匠が見られます。こちらも古代ギリシャ やローマのものを模したもので、ルネサンス 以降に欧米の建築でよく見られるようになったものです。ペディメントはギリシャ のパルテノン神殿 なんかが代表的ですね。
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ドームがついた建築の中に入ってみると、円形の広間になっていることがわかります。このようにドームの屋根がついた広間や建物のことをロトンダ と呼び、ルネサンス 建築の代表的なスタイルとして知られています。
『ソアリン』のロトンダ
この部屋の前にはしっかりと「ROTONDA(ロトンダ)」の表記が見て取れます。ちなみに続いて記載されている「VITTORIA(ウィクトーリア)」とはローマ神話 に登場する勝利の神の名前で、ギリシャ 神話でのニケと同一視されます。『サモトラケのニケ 』で有名ですね。「ALATA(翼のある)」という形容があることから、空を飛ぶことをテーマとしたこの博物館にちなんで名づけられているのでしょうか。
「翼のあるウィクトーリアのロトンダ」の表記
続いてみんな大好きな『東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ 』を見ていきましょう。正面入り口(パークとは反対側)を見てみると、先ほどまで紹介したルネサンス 建築の意匠が多く施されているのがわかります。オーダーの原則に、ドーム構造、アーチ構造、ピラスター、ペディメントなどが見られます。
建築の上部には大きなドームがありますが、レンガの色味や八角 形の構造をしている点などから、ルネサンス 期の代表的な建築サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂 を彷彿とさせます。ルネサンス 期のこのようなドームは、外からの視点を重視した屋根としての役割を果たしており、紡錘形の輪郭がはっきりと浮かび上がっているのが特徴です。
ミラコスタ のドーム
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またドームの上には突出したクーポラ という小部屋があります。これは展望台として光や空気を取り入れるためにしばしば使われ、ルネサンス 建築において発展したものとされています。
ドーム頭頂部のクーポラ
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このドームがホテルミラコスタ のロビーになっており、先ほど登場した五層吹き抜けのロトンダ 構造になっています。このロトンダもオーダーの原則にそって8本の円柱が立っていることがわかりますね。
ミラコスタ ロビーのロトンダ
ポンテ・ヴェッキオ
イタリアに実在する橋『ポンテ・ヴェッキオ 』 と同じ名を持つ橋がメディテレーニアンハーバー にもあります。イタリア語で「古い橋」を意味するのですが、この橋の上に在る建築の一部で初期ルネサンス 建築のようなものを見ることが出来ます。
ポンテ・ヴェッキオ
円柱の上にアーチがかけられている構造がありますが、これは一見トスカナ式の柱とアーチという古代の建築様式を再現しているように見えます。しかし柱と梁というオーダーの原則からは逸れていますよね。まだルネサンス 建築が大成していない初期のルネサンス 建築なのでしょうか。
建築のほかに、ルネサンス は多くの知識をヨーロッパにもたらしました。中世以降いったんは埋もれてしまった古代の知識がビザンツ やイスラーム 世界を経てヨーロッパで復活したことにより、様々な学問の動きが活発になったというわけです。
地理学
まずは地理学という観点から見ていきましょう。フォートレス内の『エクスプローラ ーズ・ホール』には古代ローマ の学者クラウディウス ・プトレマイオス (83~168頃) の肖像画 が描かれています。
クラウディウス ・プトレマイオス (83~168年頃)の肖像
彼の著作『地理学』を基に再構成されたとされる世界地図、通称「プトレマイオス 図」が13世紀に入ってビザンツ帝国 の首都コンスタンティノープル で再発見されたことを機に、修復された写本がイタリアへともたらされます。
「プトレマイオス 図」を表した絵
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この図に刺激されて、15世紀には新方式の地球図の作成が試みられるようになり、15世紀後半には、マルティン ・ベハイム(1459~1507) が現存する最古の地球儀を作るまでに至ります。フォートレスの中にあるレストラン『マゼランズ』の中央には大きな地球儀がありますね。
『マゼランズ』の地球儀
ja.wikipedia.org 他にもルネサンス では現在の世界地図でも使われるメルカトル図法 で有名なゲラルドゥス・メルカトル(1512~1594) などの活躍で知られていますが、決して現在の科学のように客観的な事実を追求するものではありませんでした。彼のような極めて優秀な学者でさえ、古代や中世から続く伝説や神話的な事柄を信じており、自らの地図に盛り込んでいた と言われています。実際フォートレス内の部屋『ナビゲーションセンター』 では大きな海図が描かれていますが、よく見てみるとそこには伝説上の島 や海洋生物などがいたりします。
『ナビゲーションセンター』 海図上の船の模型を操縦することが出来ます
ちなみによくこの部屋は、「16世紀当時平面だと信じられていた地球を再現したもの」だと考えられがちですが(公式ガイドにも大体そう書いてあります)、史実的にみれば、西洋では古代ギリシャ からこの時代まで、地球が球体をしていたということは少なくとも知識人の間では常識であり、地球が平面だと信じていた人はごく僅かだったとされています。
天文学 史においてルネサンス はかなり重要な位置を占めていると言えます。ルネサンス 期に登場したニコラウス・コペルニクス (1473~1543) が地動説 を唱えたことが有名ですね。2世紀に前述のプトレマイオス が提唱した地球を中心とする天動説は、それ以降の天文学 において絶対的な権威として君臨しており、ルネサンス 以降も大勢の支持を受けて健在でした。しかしその一方で、プトレマイオス の宇宙論 の真偽に疑問を投げかける声は多くあり、その動きの中で生まれたのがコペルニクス の考えだと言われています。フォートレスの一室『チェインバー ・オブ・プラネット』 は、まさにこの太陽を中心とする地動説を体現した部屋です。この部屋には太陽と当時発見されていた6つの惑星を模した太陽系儀が置かれています。
『チェインバー ・オブ・・プラネット』 巨大な太陽系儀と天井に描かれた星が魅力的な部屋
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また後に、地動説の普及でプトレマイオス の権威が低下したことに伴い、それまで変更が加えられていなかった彼の「トレミーの48星座 」にも修正がなされました。様々な天文学者 が新しい星座を考案しましたが、そのうちの1人であるヨハネ ス・ヘヴェリウス(1611~1687) が完成させたとされる星図 がマゼランズの天井に描かれていたりします。
『マゼランズ』の天井画
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しかし、プトレマイオス が地動説を唱えてもなお、当時の学者の間ではいまだ天動説が優勢でした。『エクスプローラ ーズ・ホール』にその肖像画 が飾られているティコ・ブラーエ(1546~1601) がその代表として知られています。
ティコ・ブラーエ(1546年~1601年)の肖像
彼は自身の天文台 を建て、膨大な数の星の観察を続けました。その際に使用したとされる彼の渾天儀などが彼の肖像の下には描かれています。
ブラーエの使用した器具 左から台座付きの六分儀、黄道 式渾天儀式、方位角四分儀
ブラーエはコペルニクス の地動説の考えを理解はしながらも、彼自身の観測データがあったことや、彼が敬虔なプロテスタント であったため、天地創造 の中心は地球であるという旧約聖書 の言葉を無視できなかったことから、『ティコ体系 』(『修正天動説』とも)という独自の宇宙モデルにたどり着きます。彼の理論は、あくまでも宇宙の中心に位置するのは静止した地球で、その周囲を月や太陽が回り、残りの水星、金星、火星、木星 、土星 といった惑星が太陽の周りを回るといったものでした。
『ティコ体系』を示した絵
またこの時代、天文学 は航海においての重要度が高くなり、それを裏付けるかのようにマゼランズには星の観測に必要だったアストロラーベ や四分儀 などの道具が飾られています。これらの道具はいずれもヨーロッパでルネサンス 以降に多く使われていたものだそうです。
真鍮製と思われるアストロラーベ
バックスタッフ(写真上部)や四分儀 (写真中部)といった天文器具とそれに関する絵
ja.wikipedia.org
今でこそ錬金術 はいかさまの魔術だと評されますが、当時は立派な学問の一つであり、現在の化学の礎となっているのもまた事実だと言えます。古代オリエント やヘレニズムの蓄積を受け、イスラーム 世界で洗練されたこの術は、中世のさなかにイベリア半島 を通して西ヨーロッパに断片として伝達され始めました。フォートレスの中には、『アルケミーラボラトリー』 という錬金術 師の部屋があります。高度な思弁と技術、物質の化学上の性質と変成に関する知識を必要としたこの魔術は、ルネサンス 期に最盛期を迎えたとされています。
『アルケミーラボラトリー』錬金術 師の部屋
部屋では蒸留の実験をしている最中のよう
工学
ルネサンス の人文主義 においては、科学と芸術を両極端なものとみなしてはいませんでした。数多くの芸術作品を生みだしたことで有名なレオナルド・ダ・ヴィンチ (1452~1519)はそれらと同じくらい革新的な科学や工学に関する研究を行っていたことで知られています。
レオナルド・ダ・ヴィンチ (1452年~1519年)の肖像
『エクスプローラ ーズ・ホール』の彼の肖像画 の下には、彼が書き残した手稿に描かれていた多くの発明品を見ることができます。
ダ・ヴィンチ の手稿に描かれている翼、羽ばたき機、プロペラエンジン、戦車などの絵
また、彼が発明した羽ばたき機を基にして実際の形としてあらわした『フライングマシーン』 といったものも置かれています。が、2023年5月現在撤去されています。早く戻ってきて欲しいですねこれ。
『フライングマシーン』ダ・ヴィンチ の発明をもとにして作られた羽ばたき機
ここまで長々と書いてきましたが、ルネサンス といったらやっぱり芸術作品ですよね!ということで最後にメディテレーニアンハーバー で見られるルネサンス の芸術について見ていきましょう。
絵画
ルネサンス と聞いて誰もが思いつくのはやはりレオナルド・ダ・ヴィンチ の『モナ・リザ 』 に代表される絵画ではないでしょうか。パラッツォ・カナルの一角には『モナ・リザ 』を模写していると思われるアトリエがあります。
パラッツォ・カナル一角のアトリエ
よく見てみるとこの絵の女性には口元が描かれておらず、まわりにはいくつかの口元のスケッチがあることがわかります。この絵の主が口元の違いによる絵画の女性の表情の変化を楽しんでいるという、ディズニーなりのユーモアなのでしょうね。
絵画とともに様々なスケッチが
ポルト ・パラディーゾの建築の壁面には立体的に描かれた装飾がなされています。これらはフランス語で「目を騙す」という意味のトロンプルイユ というもの。いわゆるだまし絵ですね。これはルネサンス 期に遠近法の絵画の技法が確立したことで誕生したものと言われています。
壁一面に描かれたトロンプルイユ
ちなみに、ポルト ・パラディーゾのモデルの一つとなっているイタリアのポルトフィーノ はジェノヴァ県 に位置していますが、ジェノヴァ には同じように壁一面にトロンプルイユで装飾が施された『サンジョルジョ宮殿』と呼ばれる建築があったりします。
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ルネサンス で発見された遠近法は、アナモルフォーシス という技法にも応用されます。アナモルフォーシスとは道具を介したり角度を変えることにより正常な形に見えるように、故意に絵を歪める画法のことです。ちなみにこの画法の最古の例はレオナルド・ダ・ヴィンチ だと言われているそう。ルネサンス 期のドイツの画家ハンス・ホルバイン(1497~1543) はアナモルフォーシスを使用したことで知られており、その代表作品である『大使たち』 がマゼランズに飾られています。
『大使たち』(1533年)
この絵画はよく見てみると下の方に細長い謎の物体が描かれているのがわかると思います。ここにアナモルフォーシスの技法が使われており、これは角度を変えて左下もしくは右上の方から見てみると物体としてはっきりと認識できるというものです。ちなみにこの謎の物体の招待は髑髏。死の象徴である髑髏を描くことで、人の死はいつ訪れるかわからないというテーマを暗に示しているということなんでしょうね。
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またフォートレスの中にはこの技法を実際に体験することが出来る『イリュージョンルーム 』という部屋があります。
『イリュージョンルーム』
この部屋には床、壁、天井それぞれに絵が描かれていますが、部屋の手前にある歪曲レンズを通すことで、それらが一枚の絵に見えるというもの。
レンズを通して見ることで一枚の絵のように
ちなみにここに描かれている絵はヴェスヴィオ 火山の噴火により滅びゆく古代ローマ の都市ポンペイ の街並みであることが絵の作者から明言されています。(リンクを貼っておきます。)
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音楽
様々な文化が発達したルネサンス において音楽もその例外ではありませんでした。しかしここでいうルネサンス音楽 とはあくまでルネサンス 期に見られた音楽の特徴であり、それ以降の古典派やロマン派音楽のような絶対性は持っていないものです。またルネサンス の異議でもある古代の復興という点においてもルネサンス音楽 は重点を置いていませんでした。
ルネサンス音楽 の中心となるものは宗教曲を題材にした声楽でした。16世紀に宗教改革 が起こったとはいえ、いまだローマ・カトリック教会 の権威は絶大であり、この時代の音楽家 の多くは教会に雇われていたそうです。カトリック 教会の宗教音楽の代表であるグレゴリオ聖歌 は、中世で誕生した後この時代まで歌われ続けてきたと言われています。マゼランズにはそれを示すかのように、ラテン語 で書かれたグレゴリオ聖歌 の楽譜である「ネウマ譜」 が飾られています。
「ネウマ譜」ラテン語 でマタイ福音書 を引用した歌詞が書かれています。
ちなみにグレゴリオ聖歌 は前述のチェインバー ・オブ・プラネット内でBGMとして使用されており、そこで実際に聞くことが出来ます。
マゼランズには他にも16世紀頃のものとみられるタペストリ ーやそれに関する楽器が飾られています。下記のタペストリ ーでは、左の男性がオーボエ を持っており、その右の女性がプサルテリウムと呼ばれる楽器を持っています。プサルテリウムは中世にイスラーム からヨーロッパに伝わり、15世紀まで幅広く普及、後にチェンバロ に発展したと言われている楽器です。
左からオーボエ を吹く男性、プサルテリウムを演奏する女性、弓のようなものを持つ女性、楽譜を持つ男性
saisaibatake.ame-zaiku.com
下の画像のタペストリ ーでは真ん中の女性がパイプオルガンを演奏しています。タペストリ ーの上にある細長い楽器はサズと呼ばれるもの。トルコやイランの楽器で、イスラーム の古典音楽に特徴的な弦楽器の音は主にこの楽器から出ているらしいです。アラビアンコーストのBGMを想像してもらうとわかりやすいですね。
タペストリ ー上の細長い楽器がサズ
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マゼランズのタペストリ ーについてはこちらの記事でまとめているので、よろしければご参照ください。↓
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タペストリ ーの横には、リュート と携帯用オルガンが飾られています。リュート はルネサンス 期に非常に人気があり、同時代の代表的な楽器でもあります。フォートレス内ではエクスプローラ ーズ・ホールで流れているBGMにもリュート が使われていたりしますね。
リュート (上)と携帯用オルガン(下)
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パラッツォ・カナルの一角では楽器屋のショーウィンドウを見ることが出来ます。看板には「マンドリン とヴァイオリンの店」と書かれています。その名の通りマンドリン やヴァイオリンがショーウィンドウにはディスプレイされていますね。
「マンドリン とヴァイオリンの店」
マンドリン は17世紀に先ほどのリュート を基にしてイタリアで発祥したとされている楽器です。ディズニー作品『わんわん物語 』の主題歌「ベラ・ノッテ」で使われている弦楽器ですね。「ベラ・ノッテ」はメディテレーニアンハーバー でもBGMとして使われています。
ヴァイオリンは皆さんご存じのとおりですが、イスラーム で使用されていた弦楽器ラバーブ をもとにして(諸説あります)、ルネサンス 期である16世紀初頭に北イタリアをはじめとして登場したとされています。ちなみにラバーブ はディズニーシーのアトラク ション『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』に登場する巨人が演奏していることでおなじみですね。
ディスプレイされているマンドリン やリュート
終わりに
というわけで今回は世界史におけるルネサンス という視点からメディテレーニアンハーバー を見ていこうという記事でした。僕としてはこの記事が、少しでも皆さんがメディテレーニアンハーバー に興味関心を持つきっかけとなってくれれば幸いです。
思ったより長い記事になってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!これからもできる限りブログを更新していくつもりなのでどうぞよろしくお願いいたします。コメント、感想、リクエス ト等大歓迎です!
それでは!
参考文献
・東京図鑑 (編)(2007)『東京ディズニーシー 物語(ディズニーストーリーブック)』講談社 ・樺山紘一 (1996)『世界の歴史(16)ルネサンス と地中海』中央公論新社 ・エド ワード・ブルック=ヒッチング(著)関谷冬華(訳)(2020)『宇宙を回す天使、月を飛び回る怪人 世界があこがれた空の地図』日経ナショナルジオグラフィック ・スティー ヴン・ジェイ・グールド(著)新妻昭夫他(訳)(2007)『神と科学は共存できるか?』日経BP ・吉村正和 (2012)『図説 錬金術 』河出書房新社 ・ドメニコ・ロレンツァ他(著)松井貴子 (訳)(2007)『ダ・ヴィンチ 天才の仕事ー発明スケッチ32枚を完全再現』二見書房